「政府は必ず嘘をつく」ジャーナリスト・堤未果さんが真相を明らかに
「政府は必ず嘘をつく」ジャーナリスト・堤未果さんが真相を明らかに
公開日: 2013/02/12
政府も多少は嘘をつくだろう、くらいに考えては間違いを起こしそうです。政府とは大々-的に嘘をついて民衆を支配してきた組織だと言えるのです。今の時代、この大嘘をどれだ-け多くの人々が見抜くことができるかどうかが問われています。また、嘘は近年だけに始-まった話ではなく、長い歴史に中にもたくさんあることが明らかになりつつあります。
引用元misaのブログ
今、ちまたで話題になっている15日放送の、愛知テレビ『真実は闇の中…政府は必ずウソをつく?』の動画をまとめてみました。
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9.11に端を発したのが、イラクへの爆撃。
このときアメリカ政府は爆撃の理由についてこう説明していた。
『サダム・フセインはアルカイダと繋がっている。』
『イラクは大量破壊兵器を隠し持っている。』
戦争の代償はあまりにも大きかった。
2011年12月の終了宣言までに1兆ドルの税金がつぎ込まれ、およそ4,500人が犠牲になった。
そしてなによりフセインにはアルカイダとの繋がりはなく、イラクには大量破壊兵器もなかったのである。
イラク戦争の本当の目的はなんだったのか?
イラクへの攻撃は、9.11のテロからわずか4日後に議会で発案されていた。
これは、アメリカ政府はテロには屈しないという姿を国民にもアピールするために早めに動いたというのが表むき。
しかし、国民はみんなパニックで、その中でどんどん事が進んでいた。
結果的にはパニックになっていたために、政治から目が逸れていたのである。
なので、国会でどんな法律が決まっていたか、どんなことが決定されていたのかという事に国民はいっさい関心が向いていなかった。
そういう時には国民の雰囲気もとりあえず敵を見つけて戦う、仕返ししろという感じになる。
国民がショックを受けている間に一気にやってしまおうというのが彼らのいつものパターン。
政府がウソをつくのは国民がパニックに陥っているような、出来事で言えば、なにか事件が起きた時。
例えば、9.11もそうだが、リーマンショックの後も、金融関係者に莫大な支援が回る法律があっという間に議会で通ろうとした。
完全にみんなショックを受けて、このままだとアメリカ経済は破滅するとあちこちで言われると政治家は反対もできなくなった。
9.11はみんなの隙を突いてという開戦だったが、後でフセインは関係なかった、大量破壊兵器もなかった、と。
それはアメリカ政府も発表した。
少なくとも私たちがショックを受けている間に、すぐにアフガニスタンが爆撃されて、それから今度はイラクが理由になって、その戦争の開始理由もどんどんコロコロ変わって、大量破壊兵器もなかったということをIAEAや米軍の高官が言っているにも拘らず、マスコミもそれに乗って流れが出来てしまった。
それが分かっているのに引き返さなかった理由がある。
イラクのサダム・フセイン元大統領の像が倒されたニュースがそれを象徴している。
当時は、群衆が歓喜しているシーンが繰り返し、何度も何度も放送された。
バクダッドを米軍が解放したということで、バクダッド中が喜んでいるという形で放送されていたが、実は、その銅像の周りにいるのは、本当に数十人で、報道陣と米軍関係者が丸く囲って、他の市民が入れないように隔離していた。
そもそもこの戦争は、アメリカ政府が広告代理店にビジネスとして依頼したというところがあった。
アメリカの大手広告代理店に、アメリカ政府が750万ドルという契約金で依頼をしていた。
この演出の商品名は『バクダッドの政権交代』ということでやっていた。
代理店が請け負った戦争。星条旗をフセインの銅像にかぶせるとかは、広告代理店の演出のなかに入っている事。
日本の場合はアメリカのCNNや大手のマスコミの映像をそのまま流すので、検証されないものを見て、それをそのまま私たちは鵜呑みにしてしまっている。
どうしてこういうことが起きてしまうのかを理解するためのキーワードがある。
それが『コーポラティズム』。
コーポラティズムとは、グローバル企業の経営者とか株主とかいった資本家が、政府と結びつき民主主義に反した政策をやり、国民の犠牲の下に彼らの利益をふくらませて、株主への配当金を出来るだけ多額にするという仕組み。
政府と有力グローバル企業が癒着している国はたくさんあるが、特にアメリカが代表的。
イラク戦争では、アメリカの大企業であるハリバートンとかがイラクの復興で非常に儲けた。
つまり、戦争で自分たちがインフラを壊しておきながら、また作ったのである。
その金はどこから出て来たかというと、アメリカ国民の税金。
それがハリバートンの株主の配当金として払われた。
そしてハリバートンの偉い人が、当時の副大統領だった。
いっぺん戦争で更地にしといて、いろいろインフラ立ち上げる為にアメリカの会社に発注させるというわけ。
こんな事は政府と結びつかないとできない。
だから、戦争が終わった後にどこが莫大な利益を得たかということを、最後までフォローして見てみると、全部一本の線でつながる。
当然、そのコーポラティズムをやるには民主主義がいちばん邪魔。だから、その民主主義を動かすためには、マスコミに対して影響力を高めるのが一番いい。
そのためにスポンサーになりお金を出す事が行われる。
ここからは、日本政府が国民にウソをついたかを検証する。
福島第一原発に関する政府の発言。
『メルトダウンはしていない』(2011年3月13日)
『ただちに健康に害はありません』(2011年3月18日)
言わずと知れた当時の枝野官房長官の発言。
実は、彼らは12日にメルトダウンしている可能性が非常に高いという情報を持っていた。
パニックを避ける為とか、いろんな言い訳はできるが、政府と電力会社の関係とか、マスコミや学者と電力会社の関係とか、そういうものが網の目のようにあるなかで、発表しているわけで必ずしも全部が国民のほうを向いているわけではなかった。
それを私たちが鵜呑みにすることで、取り返しがつかないことがそのあと起ったとしても、やはり誰も責任を取らないという事。
政府がウソをつくのは、誰のためについているか、ということ。
そして、今まさに政府がウソをつこうとしているのではないかというのが、「TPP」である。
TPPとはアメリカやベトナム、チリなど11カ国で交渉中の『例外なし』の関税撤廃を目指す経済連携協定のこと。
TPPは、私たちの生活すべてに影響する。
TPPについて、もっとよく知っておくべき事柄が『ISD条項』と呼ばれるもの。
これは相手国に投資した企業が、相手国の政策によって損害を被った場合、相手国を提訴することができるというもので、TPPに参加するともれなくついてくる。
分かりやすく言うと、こんな事例がある。
アメリカの石油会社A社が、有害な化学物質を添加した石油をカナダに輸出していた。
カナダが、この物質の使用を禁止したところ、A社は損害を被ったとしてISD条項に基づいてカナダを提訴し規制緩和と損害賠償を求めた。
その結果、カナダはこの裁判に敗れ、損害賠償と規制緩和をすることになってしまった。
これまでの訴訟をまとめた結果、大変なことが分かった。
カナダとメキシコがアメリカ企業との間で訴訟があったが、カナダもメキシコもアメリカ企業に対し『全敗、全て賠償』となっている。
それに対しアメリカは、カナダ、メキシコ両国企業とのあいだで19件の訴訟があったが、アメリカは両国企業の訴えに対し『全勝、賠償ゼロ』。
つまり、アメリカの勝率は100%。
何故こんなに勝敗が偏るのかと言うと、まずISD条項というのは輸出企業のためのもの。
そして、訴訟を起こされたときに裁判をどこでやるかというと、国際投資紛争解決センターという世界銀行の傘下の機関でやる。
世界銀行というのはアメリカが一番支配力が強い。
それから二つ目は、投資紛争解決センターでは、あくまでも投資家にとって実害があるかどうか、ということで判定される。
しかも、これは密室裁判で、控訴できない事になっている。負けたらそれで終わり。
例えば、遺伝子組み換え作物について日本人は非常に気にしている所であるが、TPPに入った時点で、「遺伝子組み換え作物ではないと言う表示」が禁止される怖れがある。
アメリカの遺伝子組み換え作物の企業が投資してきた時に、パッケージの表示を戻すとなると、間違いなくアメリカの企業のものが売れなくなり損害を受けて、上記のような訴訟になる事が予想される。
規制を撤廃させられるなど、アメリカ企業の言うがままになるということは、完全に主権侵害だ。
こういうのが必要だとか言っている、それこそウソをついている政府の代表が、経済産業省。
それが、グローバルスタンダードだからと。
それがまさにコーポラティズムのやり口。
それでTPPを進めて、それこそイラク戦争じゃないが、後戻りできない状況になってから、あらためて国民に伝えると言うのが毎度のパターン。
そもそも、官僚から国会議員にぜんぶ情報が出てないない。これは実は日本だけじゃなくて、アメリカも。
アメリカの国会議員も合意文書を見れない。
財界や多国籍企業600社のアドバイザーは見れる。
これを進めているのは財界、1%の人たち。
テレビ局まるごと外資系に買収される可能性もある。
そうすると、もうマスコミやりたい放題。これもまさにコーポラティズムのやり口。
政府が守ってくれるのでなく、それを守らせないようにするのがTPPとか、グローバリズムとか、コーポラティズム。
もちろん国民に知られたら反対されるからギリギリまで黙っている。そういう情報は。
TPPに関して一旦テーブルにはついて、それで都合が悪ければ引き下がることもできると政府は言うが、今の時点まで来たら、今まで決まった分を全部丸呑みにしなければいけないという段階まで来ている。
今まさに、コーポラティズムによるTPP推進派と、民主主義による反対派がせめぎ合っている。
反対派の政治家を黙らせるために、9.11やリーマンショックのような大ショックが利用されるのが怖い。
自民党はとりあえず参議院選挙までは反対派の姿勢を保つ。問題は選挙の後。
参院選が終わったら、次の衆院選までは3年間もある。
いつまで経ってもTPPというバスが発進しない。日本を待っている。
では、これからどうしたらこれらのウソを見破ることができるのか。
『腑に落ちないニュースはお金の流れをチェック』
『情報を比較する』
イラク戦争のケースで言えば、政府からどこにお金がまず流れたか。広告代理店に流れた。それから、そのあとマスコミに流れた。そのあと、戦争をやっている時は、誰が誰にお金が流れたか。戦争が終わった後は誰にお金が流れたか、を見る。
お金の流れというのは、情緒的なところが一切ないので、非常に分かりやすい。
つまり誰が得をしたか、それを調べればその戦争を裏で糸引いている人がすぐ分かる。
公報、例えばIRの資料や政府の予算などを細かく見れば分かる。
テレビで発言してる学者にしても、研究費はどこの企業が出しているのか、テレビ局の株主は誰なのか、といった公開されている情報を見る事が大事。
私たちでもチェックできる。
情報を比較するというのは、イラク戦争についても、原発についても、ひとつのテレビ局だけじゃなくて、色んなテレビ局を見る。
テレビだけじゃなくて、新聞もインターネットも週刊誌も比べる。それから、日本だけじゃなくて、外国では同じニュースをどんな視点でやっているのか。全部比べてみて並べてみて、自分で判断する。
さらにコーポラティズムについてを疑問に抱きつつ金の流れとセットで見る。
そうすると慣れてきてだんだん体で分かるようになる。何となく、おかしいなと気がつくようになる。
本当に自分で情報を取捨選択しなければいけない時代に来ている。
さらに今後、注視しなければいけない政府の動きとして、特に、政府がウソをつくのが、消費税とTPP。
消費税はもちろん財務省で、TPPは経済産業省と外務省がウソをつき、彼らの意向を受けた政治家がウソをつくという構図。
今度、参院選が終わったら3年間空白の期間、黄金の期間となるので、本当にその二つに注意しなければならない。
次の参院選の一票というのは、かなり重要になる。
<まとめ終わり>
30分弱の動画なので、是非ご覧になって下さい。堤 未果さんという女性、初めて知りましたが、テレビでここまで言えるなんてナイスです。
本を読んだ感想が、あまりにもリアルなのでここに コメント欄も含めて転載をさせていただく。
このサイトの趣旨にも合致するので、一読の価値あり!!
引用元町田の独り言
またひとつ、パチリと音を立てて、ジグソーパズルのピースが埋まっていく。
堤未果氏の書いた 『政府は必ず嘘をつく』 (堤未果 著 角川SSC新書) という本を読んだあとのことだ。
なぜ、イラク戦争のときに、アメリカに捕らえられたサダム・フセインは、いとも簡単に処刑されてしまったのか。
なぜ、リビアのカダフィ大佐は、反政府勢力に見つかったとたんに銃殺されてしまったのか。
また、なぜアルカイダのビンラーディンは、裁判にかけられることもなく、アメリカの特殊部隊によって、その場で殺されてしまったのか。9・11以降の西側とイスラム側の戦争および紛争の経緯を見ていると、不思議に思えるのは、そのことだった。
確かに殺されたリーダーたちは、反民主主義的な政策を進めていた独裁者であったり、テロの首謀者であったりしたが、でも、なぜ裁判もなく、その場で即座に殺されねばならなかったのか。
まるで、彼らを生かしていると、殺害者側に不都合なことが生じるといわんばかりに。
そこには、一般の人々に知られてはならない、何か特別の “秘密” を急いで封じ込めようとしている気配が感じられた。その “秘密” が何であったのか。
堤未果氏の 『政府は必ず嘘をつく』 を読んでいるとき、ふと、それが解ったような気になった。
全体がよく見えなかったジグソーパズルのピースがひとつ埋まり、おぼろげながら、そこに描かれているものの正体が浮かび上がってきた感じなのだ。
この本で印象的だったのは、誰もが手放しで称賛した 「アラブの春」 に対する洞察。エジプトのムバラク政権の転覆や、リビアのカダフィ政権の崩壊。
それらは、
「人民を抑圧していた独裁体制が崩壊し、民主主義を希求する庶民や、職を求めても満たされなかった若者たちが求める新しい国家が誕生した」
と、世界のメディアによって好意的に報道された。しかし、同著によると、その背後で、けっしてニュースとしては扱われないひとつの “勢力” が粛々と力を伸ばしているという。
「アラブの春」 とは、誰にとっての “春” だったのか。
イスラム圏の “独裁体制” が次々と崩壊することによって、いったい誰が利益をこうむるのか。『政府は必ず嘘をつく』 という本は、そのことについて、大手メディアがけっして明かすことのない衝撃的な事実を鋭く突く。
たとえば、2011年10月に、リビアのカダフィ大佐が殺害された事件。
多くの報道は、これを 「人民の苦しい生活を無視して、自分の一族だけの栄耀栄華を極めた独裁者に対する当然の報い」 と報じた。しかし、この本に登場する、リビアに多くの知人を持つあるジャーナリストの証言を読んでみると、ちょっと印象が変わってくる。
長いが、それを引用してみよう。「 (実は、リビア人の多くは) 高学歴・高福祉の国であるリビアを誇りに思っていた。
アフリカ大陸で最も生活水準が高いリビアでは、教育も医療も無料で、女性も尊重されていた。
(カダフィ政権が) 42年間も政権を維持できたことには、ちゃんと理由がある。
西側の新聞やテレビは、チュニジアやエジプトで反政府の動きが出たときと同じように 『高騰した食料価格と、貧富の差に苦しむ民衆からカダフィへの不満が出た』 と報道されたが、実は、リビアはNATOの侵攻前までブラジルやロシアよりも高い生活水準を保つ国だったのだ。
カダフィは全ての国民にとって、家を持つことは人権だと考えており、新婚夫婦には米ドル換算で約 5万ドルの住宅補助金を、失業者には無料住宅を提供し、クルマを購入するときは、政府が半額を支払っていた。
電気代はかからず、税金はゼロ。教育、医療は質の高いサービスが無料で受けられる。(さらに) すべてのローンは無利子でガソリンは格安。農業を始めたい人には土地、家、家畜、種子まですべて国が無料で支給。
42年前、カダフィが権力の座に就く前に10%以下だった識字率は、最後には90%を超えていた。これらの政策を可能にしていたのは、アフリカ最大の埋蔵量を誇る石油資源だった」ことの当否は、私にはよく分からない。
かなり、カダフィ政権寄りのバイアスがかかった証言かもしれない。
だから、当然、反論も多数出るだろう。
しかし、ここで引用した文章の最後、「アフリカ最大の埋蔵量を誇る石油資源」 というくだりには、この政変に何か “隠された事実” があることをほのめかしているように思えてならない。同書では、カダフィ政権が、この “アフリカ最大の埋蔵量を誇る石油資源” をバックに、ある通貨政策を計画していたことを明かす。
それは、144トンという巨額な金の存在である。
カダフィは、この金を原資に、ドルやユーロに対抗するアフリカとアラブの統一通貨 「ディナ」 の発行を計画していたという。
そこにはIMFや世界銀行の介入から自由になる 「アフリカ中央銀行」 の創設も含まれていたとも。そのことが、カダフィ政権の崩壊と、どうつながるのだろうか。
同書は、次のように説明する。「統一通貨である 『ディナ』 が実現すれば、アラブとアフリカは統合される。だが、石油取引の決済がドルからディナに代われば、基軸通貨であるドルの大暴落は避けられない」
これが、アメリカが最も憂慮したことであったという。
カダフィ政権の崩壊は、自国の民衆が求めたものという以上に、アメリカの “国策” が反映されたものだったというのだ。実は、これと似たようなことが、かつて起こっていた。
それは2003年に始まったイラク戦争である。
イラク戦争は、当初、サダム・フセインが、9・11のテロ首謀者と関係していて、さらに 「大量破壊兵器を隠し持っている」 という疑いによってアメリカが仕掛けた戦争だった。
しかし、その後、査察団を派遣した結果、そういう事実はなかったことが判明した。
そのため、世界でもトップクラスを誇るイラクの石油埋蔵量をアメリカの利権化に置くために開始された戦争だった、という推測が一般的に広まった。しかし、近年、イラク戦争は、「アメリカが世界の通貨基軸であるドルを守るために起こした戦争だった」 という見方が出ている。
2000年11月。
イラクの大統領だったフセインは、当時ドルで決済していた石油の売上代金をやめることを宣言。以降、すべてユーロで受け取るということを国連に承認させた。アメリカは、これを、ドルの通貨基軸体制を揺るがす脅威と感じた。
ドル以外の通貨でも石油が買えるようになれば、誰も赤字まみれのドルを受け取らなくなり、ドルが大暴落する可能性が出てくる。
アメリカは、どうしても、フセインの決定をつぶさなければならなかった。
イラク戦争というのは、ドルを基軸として回っている国際石油市場のルールを守るための戦争だったのではないか。これは 『超マクロ展望 世界経済の真実』 (水野和夫&萱野稔人 共著) において指摘されたことだが、著者のひとり萱野氏は、そこに、アメリカの新しい政治・経済戦略を読み取る。
すなわち、現代の戦争は、他国の領土を侵略してそこを植民地的に支配することではなく、経済ルールを策定するために行われるようになったことを、このイラク戦争は示唆しているというのだ。
では、「経済ルールを策定」 することによって、儲けることができるのは誰か。
利益の確保を、世界規模の市場で独占しようとしているグローバル企業である。堤未果氏の 『政府は必ず嘘をつく』 によると、イラク戦争後、アメリカ系企業を中心とした西側諸国の投資家や金融機関のための大幅な規制緩和と民営化が行われ、イラクの国内企業が次々と倒産するなかで、外資が巨額の利益を手に入れたという。
同書の中で、著者の取材を受けた元外務官僚である孫崎享 (うける) 氏によると、「独裁政権を倒して民主化を進める」 という運動には、必ずアメリカの国策が反映されていると指摘する。
孫崎氏はいう。
「日本の報道を見ているだけでは決してわからないが、市民運動という形で他国の政権を転覆させる手法は、すでにアメリカの外交政策のひとつとして過去何度も使われている。(エジプト革命などは) 、そこにSNS (ソーシャル・ネットワーキング・サービス) という新技術が加わったから目立ったにすぎない」彼は、さらに、
「今回の 『アラブの春』 を成功に導いた功績は、世界最大のSNS 『フェイスブック』 にあるとされるが、(これに関しては) アメリカが事前にアラブの若者を招き、フェイスブックやツィッターなどのSNSの技術指導をしていた」
とも。
また、ロシアのプーチンが大統領に返り咲く前にロシアで起こった反プーチンデモも、米国が関与している可能性が高いという。繰り返して書くが、それが真相であるのかどうか、私には判断する材料がない。
退屈しのぎの座談の席で好まれる 「陰謀論」 や 「都市伝説」 のたぐいに似た話かもしれない … とも思う。だが、「核兵器の廃絶」 や 「イラクからの撤兵」 を主張した “平和主義者” のように振舞っていたオバマ大統領が、密かにビンラーディン暗殺の計画を周到に進め、その成功を 「正義が実現された」 と高らかに国民に宣言したときの違和感。
それが何に由来したものであったのか、堤未果氏の本を読んでいると、アメリカの思惑が少しずつ明瞭な形をとって見えてくるような気もする。オバマは、イラク戦争を主導したブッシュ前政権の仕上げをしたようなものではないか。
ここに来て、ようやく私にも、オバマの 「世界平和主義」 や 「貧民救済という理想主義」 の裏に秘められていたものが見えたような気がした。
つまり、彼もまたブッシュと同じように、アメリカのグローバル企業の進展を邪魔するイスラム原理主義的な集団を、「テロの脅威を取り除く」 という名目で排除したにすぎない。2008年。オバマは、大統領選前の公開討論会で、共和党政権が推し進めてきたグローバリゼーション、いわゆる新自由主義政策をめった切りに批判した。
2009年のワシントン広場で、オバマが大統領の就任演説を行ったとき、オバマを支持した多くのアメリカ人は、これで軍事産業や金融業界の暴走で、貧困が拡大した共和党ブッシュ政権が終わったと思った。しかし、オバマ大統領の政策が、多くのアメリカ人を失望させたことは、2011年9月に、ニューヨークのウォール街で始まった抗議運動を見ても分かる。
デモに参加した人々の証言によると、
「オバマの民主党政権下で、貧困は急激に進み、上位 1%の富裕層向けに政策が決められる政治が一層進んだ。彼は、就任すると何兆ドルもの税金で銀行を救済。監視体制と教育の市場化を強化し、軍事予算を増大する一方で社会福祉を削減して貧困大国化を一気に加速させた」
という。なぜ、そのようなことが起こったのか。
『政府は必ず嘘をつく』 によると、オバマでさえ、自分を支援したグローバル企業の圧倒的な資金援助の力を無視することはできなかったのだという。著者の堤未果氏は書く。
「アメリカの大統領選挙は、恐ろしく資金がかかる。2008年の大統領選挙で当選したオバマ大統領が集めたキャンペーン金額は7億5,000万ドル、2012年の再選を狙う次の選挙ではさらに多く集めることが必要となる。
何億ドルという単位は、市井の有権者から集めていては間に合わない額だ。よって、(99%の一般市民を無視しても) 上位 1%の超富裕層や大資本からの支援を取り付けざるを得ない。
アメリカを貧困大国化させている元凶である “コーポラティズム” にメスが入らない大きな理由のひとつは、この政治資金法のゆるさにある」コーポラティズム。
ここで耳慣れない言葉が出てくる。
それは、堤氏の定義によると、「政府と企業の癒着による政権運営システム」 のことだという。要は、アメリカにおいては、すでに 「政府は機能していない」 ということらしい。
政府を動かしているのは、今や世界を市場とする石油企業やウォール街の投資家たち、製薬会社、軍産複合体やアグリビジネスなどの業界だという。そして、そのような大資本に買収されたメディアによって、世論は巧妙に操作されていくようになる。
同著によると、1980年代、レーガン政権が行った規制緩和によって企業がメディアを所有することが解禁され、テレビ市場の 9割を占めていた 3大ネットワークテレビ局がみな大資本の傘下に置かれるようになったという。
NBCは世界最大のコングロマリット (複合企業体) であるGEに。CBSは投機会社。ABCはウォルト・ディズニー・カンパニーに買収され、以来、大資本の意向に添わない情報は徹底的に管理されるようになる。現在、アメリカの政治を領導しているのは、このように、マスコミすらも管理下に置いたグローバル諸企業だという。
だから、アメリカの政策は、民主党が運営しようが、共和党が担当しようが、政党が政策を実行しているわけではない。それらの政党を背後で操る大企業が政治の決定権を握っているというわけだ。
アメリカの政治は、長い間、民主党と共和党の二大政党による政策論争を有権者が判断し、有権者の支持によって国策が制定されると思われてきた。
しかし、事実は違う。
選挙キャンペーンが始まるたびに、大資本傘下のマスコミは一斉に対立軸を強調する報道を流すが、それはすでに、巨大企業が広告代理店を通して作成したシナリオ通りに展開しているにすぎないとも。
対立陣営における苛烈なネガティブキャンペーンでさえ、国民に 「まだ民主主義が機能している」 と思わせるための情報操作だという。こう書く堤未果氏の洞察は、果たして正しいのか。
三度同じことを繰り返すが、私には分からない。
ただ、そう言われると、実に多くの疑問が氷解するような気がする。かつて、東欧で、「独裁政権」 といわれたいくつかの国家が、民衆の反体制運動によって壊滅した。
しかし、その後、それらの国に、本当の意味での繁栄は訪れたのか。
さらに、 “民衆を弾圧していた独裁政権” が次々と崩壊した東欧を含めたユーロ圏が、なぜ、どこも相変わらずの失業問題や貧困問題を抱えているのか。著者は、セルビアにおける 「オトポール!」 革命に、その問題点の由来を見る。
2000年に、東欧のセルビアでは 「独裁者」 といわれたミロシェビッチ政権が、「オトポール! (抵抗!) 」 を叫んで自由を求める民衆の力によって崩壊した。
このとき、今のエジプト革命と同じように、民主化を求める市民たちが抑圧を強いる旧体制を崩壊させたと報道された。だが、堤未果氏によると、
「ミロシェビッチ政権が転覆させられた後のセルビアは、国の大規模な規制緩和と民営化により市場開放され、莫大な公共部門の産業や事業、そしてヨーロッパ最大規模の埋蔵量であった鉛、亜鉛、銀、石油といった天然資源が次々にアメリカの投資家と多国籍企業の手で落札された。
その後に 『民営化されたセルビア国内企業500社』 を見ると、フィリップ・モリスやUSスチール、コカ・コーラなどの米系グローバル企業がリストにずらりと並んでいる」
という。確かに、セルビアの “独裁政権” は倒れた。
しかし、セルビアでは、その後、数々の規制緩和が行われ、「自由貿易」 の美名のもとに、民衆の生活向上よりも企業の利益だけを優先的に追求する政策が次々と断行された。このようなアメリカ政府を動かすグローバル企業の戦略は、1980年代のレーガン政権の時代から始まったものだといわれる。
少し長いが、その部分を引用する。
「レーガン政権下のアメリカでは、国務省と諜報機関が多くの慈善団体やNGOに何億ドルもの予算を投じた。
(その予算を活用し) 、1980年代以降、アメリカ政府は非協力的な外国の政権を不安定化し転覆させるために、従来のような軍事力ではなく、『人道主義・民主主義』 というソフトパッケージに包まれた手法を採用するようになった。
そこでターゲットとなった政府や指導者を、CNNやBBC率いる国際メディアが 『人権や民主主義を侵害している』 として繰り返し非難する。
そして、水面下で米国が支援し、時には訓練した市民団体がツィッターやフェイスブックを通して人を集め、反政府運動を起こす。
彼らは暴力的な行為で政府を挑発し、国際メディアがそれを 『独裁者に弾圧される市民』 というわかりやすい図に当てはめイメージを広げていく。
(そして) 無防備な市民を救うという理由で、NATO (北大西洋条約機構) 軍の武力介入が正当化され、最終的にターゲットとなった政権は 『民主化革命』 という “崇高な” 目的のために、内部から自然に崩壊したことにされる」このような指摘を、そのまま鵜呑みにすることはできないかもしれない。
なんらかのバイアスがかかった記述のようにも見える。しかし、「民主主義」 、「独裁政権打倒」 、「革命」 などという美名に何の考察も与えず、無条件に肯定することに対する著者の警告は、傾聴に値する。
また、「フェイスブック」 や 「ツィッター」 という新しいソーシャルメディアに無邪気な信頼を寄せることも、時には真実を見誤らせるかもしれないことは、考えておくべきことかもしれない。
最後に、なぜこのようなグローバル資本の暴走が始まったのか。
それに対する同著の分析を引用して終わる。
「長い間、世界にはたった二つのモデルしかなかった。西洋の資本主義か、ソビエトの共産主義か。(しかし) 1991年にソ連が崩壊したとき、(そのモデルが崩れた)。
多くの人々が歓声を挙げ、権力主義による弾圧や情報統制が終わりを告げて、幸福な未来が約束されたように思った。
しかし、ソ連崩壊によって、(アメリカを代表とする西側の) 資本主義は本来の獰猛な姿を取り戻した。
それまでは西側の資本家たちは、ロシア革命のような労働者の反乱を恐れていた。だから共産主義が象徴する貧しい生活の対極だというアピールも含めて、国民に福祉や社会保障を通して、税を還元する政策を取っていた。
(しかしソ連の崩壊によって) そのタガが外れ、資本主義は元の姿を取り戻した。
そして効率よく利益を出すためには、進化した技術で生産コストを削減するか、労働者を最安値で働かせるしかないと思い始めた。
そして目覚しいスピードで進む I T技術が、市場の国境を超えた拡大を加速させ、グローバル経済があっという間に世界を覆った」現在、先進国を中心に、世界の多くの国々で顕在化しつつある 「貧困問題」 と 「格差社会問題」 。
その原因を、どこに求めればいいのか。
それを説明する言論はあまたあるだろうが、現在、以上のような説明を上回る説得力を持つ説を、私はほかに見出していない。
参考記事 「超マクロ展望 世界経済の真実」
参考記事 「ニール・ヤング的哀愁」
参考記事 「グローバリズムの退屈な風景」
政府は必ず嘘をつく への10件のコメント
solocaravan より:
2012年5月30日 11:43 PM
国際紛争をめぐる陰謀説は諸説紛々で、素人の私にはどれが本当かわかりませんが、この著者の分析はたしかに説得力がありますね。民主化やら人権やらだれもが認めざるを得ない正義を口実にして自国の国益を押しとおすアメリカ。しかし、これは21世紀になって始まったことではなく、先の大戦にも同じパターンが当てはまるように思います。
わが国の台頭により、アジアにおける利権が脅威にさらされることを恐れた米国をはじめとする覇権国がおこなった日本たたきが太平洋戦争の主因である、という説はかならずしも自己正当化のための詭弁とも思えませんがいかがでしょう。そのようなアメリカの国策にほかならないグローバリズムに抗する日本人があまり見当たらないばかりか、むしろ喜んで押し戴いているように見えるのは気になります。そのような目で見ると、構造改革にしろTPPにしろアメリカの国益という同じ動因が作用しているように思えてきました。
2012年5月31日 2:39 AM
>solocaravan さん、ようこそ
おっしゃるとおりだと思います。
現在、アメリカ系企業を中心に進められているグローバリゼーションが、世界の政治・経済に様々な軋轢 (あつれき) を呼んでいるのは、疑いのない事実のような気もします。そしてその基本戦略は、ご指摘のように、すでに太平洋戦争のときに構想されていたのでしょうね。TPPに関しても、solocaravan さんが指摘されたように、TPPがアメリカの国益 (すなわちグローバル企業戦略ですが…) に沿った形で企業再編性を行おうという政策にもかかわらず、日本のメディアは、(故意か認識不足か知りませんが) これを正確に報道していないということを、この本の著者は指摘しています。
ちょっと引用。
「TPPが施工されると、グローバル企業は、自分たちの利益拡大の障害になりそうなものが現れれば、いつでも日本政府を訴えられるようになる。(そして) その裁判は、アメリカの支配力が強い 『国際 投資 紛争 解決センター』 で行われる。そして判決の基準は、『国民の知る権利』 や 『新聞社にとっての利益』 ではなく、『投資家にとって実害があるかどうか』 になる」
…とのことのようです。隣国の韓国は、アジア危機のときに、グローバル企業の利益を第一義的に考えるIMFの管理下に入りましたが、著者によると、
「 (韓国では IMFの管理下に入った後) 電気、ガス、水、鉄道、教育、医療、年金、食 などの公共サービスが外資に売られ、福祉が減少。中流が消滅し、グローバル企業の収益だけは上がり続けている」
…とか。
そして、「自由貿易がサムスンのような大企業を潤わせたとしても、社会保障制度が崩壊する中、労働人口の半分以上を占める非正規雇用の社員はますます苦しくなっている」 とのことでした。
実際、韓国における自殺率は近年ついに日本を抜き、世界でもトップ。その理由は貧富の格差拡大と競争の激化だといわれています。著者は書いています。
「1990年代のアジア危機で、IMF介入を受け入れた韓国、インドネシア、タイといった国々は、金融機関をはじめ国内の主要セクターが民営化され、総数2,400万人の失業者と共に2,000万人が貧困層に転落した。同地域から中産階級を消滅させたのは、危機そのものではなく、IMFによる介入だった。
韓国では企業による大量解雇を禁じる 『労働者保護法』 がIMFに撤廃させられ、国民の6割以上いた中流層がわずか3年で4割以下に激減した」TPPというのもこのような流れに沿ったもので、基本的には 「米国製品を中心とした安価な商品が大量に国内に流入してくることを意味し、特に農産物の場合は、日本国内農家は巨額の補助金で国に守られたアメリカの大規模農業と競争させられることになる」 というものらしいのです。
今こそ政府は、日本の企業や日本の農業を守らなければならないはずなのに、なかなかそういう兆しは見えませんね。特にメディアは、それに対して沈黙を守っています。すでに、日本の大手メディアも、グローバル企業の管理下に入ってしまったのでしょうか。
磯部 より:
2012年5月31日 2:32 PM
以前、私がブログに書いたアメリカも、上記の内容に似た臭いを感じたことがきっかけでした。
私たちが知らず知らずのうちに浴びている民主主義もアメリカ文化も、ソフトな支配の先兵です。
これにはときどきウンザリすることがありますが、分からない人には分からない。
うまい支配とは、そういうものかも知れませんね?アメリカさんと較べれば、北朝鮮なんか幼稚です。
手強い奴は、銃ではなく、笑顔で混乱させ、気がつくと…となる訳ですからね。町田さんの言われるように、鍵はドル基軸だと思います。
そしていまの軍事は、ミサイルではなく、ツィッターやフェイスブックなのかも?
2012年5月31日 5:52 PM
>磯部さん、ようこそ
政治的・軍事的な “威力” を恫喝的にチラつかせるアメリカへの嫌悪と、アメリカ文化のオープンな明るさへの憧れ。
確か、昔そのような記事を書かれていましたよね。私たちの世代は、みなそのような思いの中で青春を過ごしてきたのだと思います。
そのような分裂状態を経験してきたのは、何も私たち日本人だけとは限らないのかもしれませんね。
アラブやインドなどの若者もそう。
そして、何よりも、アメリカ人自身がそうであるのかもしれません。ツィッターやフェイスブックなどが仲間同士の大切なコミュニケーションツールとなる一方、それを政治的に利用して、こっそりと、ある特定集団の利益だけを守るための世論形成につなげようとする勢力もある。
そういう二律背反的な文化状況の中に置かれているのが、今の世界の若者たちなんでしょうね。徹底的な弾圧を加えるよりも、仲間同士がつながっていると錯覚させ、ソフトな形でゆっくりと民衆をコントロールする方が今の政治権力にとっては好都合。
まさにおっしゃるように、今はそういう時代になっているのかもしれません。
以下略