「日本のすべての水道を民営化します」 ~マスコミが一切報じない我が愛すべき「麻生さん」の超弩級問題発言 (<IWJの視点>佐々木隼也の「斥候の眼」: IWJウィークリー13号より)

【保守】麻生太郎「国有資産・水道を民営化しますっ!」

  p>このロボットは一つの例ですが、例えばいま日本で水道というものは世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。

しかし、水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は、全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します。

いわゆる学校を造って運営は民間、民営化する、公設民営、そういったものもひとつの考え方に、アイデアとして上がってきつつあります」。

日本の水道をすべて多国籍企業に売り渡す自民党 「カレイドスコープ」

僕は残念でならない。麻生太郎副総理の発言の件である。  正直にカムアウトする。僕は隠れ麻生ファンの一人である。僕がなぜ麻生ファンとなったのか、ということは稿を改めて書くとして、ここは親愛と敬意の念を込めて、「麻生副総理」ではなく、「麻生さん」と呼ばせていただきたい。  麻生さんの「問題発言」は、これまで何度も物議を醸し、「失言・暴言」として、そのたびごとにマスコミを騒がし、波紋を呼んできた。僕はそのたびに、「誤報であってくれ」と、心の中で願い、祈り、そして時に事実であることを確信しては、その都度消沈してきた。その「失言・暴言」リストを丁寧に作成していけば、このコラムのスペースすべてがすぐに埋まってしまうだろう。  問題は、その発言の「真意」に迫っていくと、時に単なる「失言・暴言」ではすまされない、自民党と官僚が裏で着々と進めている「思惑」の一端が見えてくることだ。ファンとしてうなだれているだけではすまないのだ。  7月29日の講演での「ナチスの手口を学んだらどうか」とする発言も、「暴言・失言」の類いとして、マスコミを大いに騒がせた。ネット上では、いわゆるネトウヨを中心に、「マスゴミは文脈を理解せずに、言葉尻だけを取って麻生さんを叩いている」という批判が吹き荒れた。  確かに、麻生さんが後に発言を撤回した際に語った、「喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった『悪しき例』としてナチスの手口をあげた」という言葉を信じれば、ネトウヨの批判も理解できる。しかし残念なことに、問題なのはそうした「言葉選び」ではなく、その発言の「中身」なのである。  今回の件で、発言の中身自体の「誤り」や「真意」について言及する報道は、日本では少ない。この発言は今や、安倍政権の「真意」である、「憲法を変えずとも、その解釈を変更することで、集団的自衛権の行使を可能にしてしまおう」という、いわゆる「解釈改憲」に踏み込んだ発言として、世界中から注視されているのだ。  この問題については、本メルマガ「IWJウィークリー」今号(第13号)の「岩上安身のニュースのトリセツ」で詳しく論じられているので、そちらをご覧いただきたい。  この他にも、麻生さんはこれまで、数々の問題発言を繰り返してきている。ナチスに言及したのも今回が初めてではない。2008年には、「(国会で)審議をしないとどうなるか。ドイツでは昔、ナチスに一度(政権を)やらせてみようという話になった」などと発言している。  あまり信じたくはないが、この発言は、1930年代のドイツが民主的なプロセスの中でナチスを誕生させてしまった、という麻生さんの誤った歴史認識に基づくものであり、この認識は今回の「ナチスの手口」発言にも通じている。  事実は、国会議事堂の放火事件をドイツ共産党の仕業と決めつけ(後に共産党が犯人である事を示す証拠は皆無だったことが明らかになっている)、弾圧を加え、共産党の議員をほぼ一人残らず拘禁し、議会に出席できない状態にした上で、「全権委任法」の採択を強行し、権力を掌握した。こうして、当時、世界で最も民主的な憲法だったワイマール憲法は、死文化してしまったのだ。「民主的」ではなく、「暴力的な」プロセスによるものなのである。  しかし本稿で取り上げたい麻生さんの発言は、こうした「問題発言」としてマスコミが列挙するものには含まれていない。そのインパクトにも関わらず、マスコミが一切報道をしなかった、しかし、今後の日本人の生活に確実に大きな影響を与えるだろう重大発言である。  4月19日、米ワシントンDCにある超党派シンクタンクCSIS(米戦略国際問題研究所)での講演で、麻生さんは「日本の水道を全て民営化します」と発言してしまったのだ。 ◇政府が着々と進める水道事業の「完全民営化」◇  麻生さんの講演は、以下のCSISの動画から全編観ることができる。問題の発言は、前半の堂々たる英語での講演が終わり、後半の質疑の中で麻生さんが語ったものだ。以下、その発言部分を掲載する。  「例えばいま、世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものをすべて、民営化します」 【CSISの動画】 http://www.ustream.tv/recorded/31681043 ※麻生さんの問題の発言は48分頃から  「水道を全て民営化します」と言った瞬間、壇上の右端に座っていたジャパンハンドラーの一人、マイケル・グリーン氏が麻生さんを直視し、水を飲んだシーンが印象的だ。  この発言は、その「真意」を探るまでもなく、「民営化します」と断言してしまっている。麻生さんらしい、男らしくて、はっきりとした物言いである。民営化するということはつまり、国内企業だけでなく、外国企業も水道事業の経営に参入することを意味する。だいたい、そうでなければ、米国のCSISでわざわざ公言する意味がない。そもそもが、米国向けの発言なのである。  公共インフラの民営化事業に外資の参入を認めることは、「水道事業を外資に握られる」「収益を第一に考える民間企業が、設備投資などに掛かる費用を賄うために、水道料金を高騰させるのではないか」という懸念から、国内では未だ反発の声が根強い。  日本人の冨と財産、国益を一番に考えているはずの麻生さんである。国民の命の源である水道事業を、外資に切り売りするようなことはしないはず。きっと何かの「言い間違い」か「言葉のあや」の類いか何かであろう、と麻生さんの隠れファンなら思いたいところだ。  しかし残念なことに、この麻生さんの発言に呼応するように、国内では水道民営化の動きが加速している。  そもそも水道民営化の動きは、2001年の第一次小泉内閣に端を発する。様々な規制緩和を推し進めた小泉政権は、その一環として水道法の一部を改正し、これまで市町村運営だった水道事業の経営に、民間企業の本格参入を可能にした。これにより、浄水場の運転業務などを、外資を含めた民間企業に委託する自治体が増加した。 【厚労省HP「改正水道法の施行について」】 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kaisei/index.html  そして今の安倍政権下で、その動きは本格化しつつある。麻生さんが議長代理、安倍晋三総理が議長を務める「産業競争力会議」で、竹中平蔵主査が4月17日の会議で、この水道民営化に言及している。竹中氏は「官業の民間開放の象徴として、インフラの運営権を民間に売却して、その運営を民間に任せる」と発言したのだ。  小泉政権時代に竹中氏を旗頭として、「構造改革」の名の下に様々な規制緩和を行い、外資を含めた民間企業に国の事業を切り売りしてきた、その流れを今日の安倍政権が脈々と受け継ぎ、推進している。そうした構図が分かりやすく見て取れる。  麻生ファンの中には、竹中氏のような構造改革主義者と麻生さんを一緒にするな、という声を上げる者もいるだろう。財政出動や公共投資の必要性を訴えてきたのは、麻生さんだ、というわけだ。僕もファンの一人として、竹中氏とは一線を画している、そう思いたいのだが、実際にはぴったり足並みをそろえているのが事実だ。  こうした動きを注視すると、麻生さんの「問題発言」は、「失言・暴言」などという生易しいものではなく、裏で政府が進めている政策を、確信犯的に発表しているものであることがわかる。  「きっとこうした国内の不穏な動きを、あえて知らせるために、麻生さんが体を張って『問題発言』として表面化させ、炎上させているのではないか」、という淡い期待が、胸にわき上がるのを僕は抑えきれないのだが、これもきっとファンであるがゆえの妄想なのだろう。僕は麻生さんへの敬愛と思慕の念を、そっと胸の中にしまいこみ、どんなに味気なくとも「ファクト」に忠実であろうとするIWJの一員として、今後も決してマスコミが追及しようとしない、麻生さんの問題発言の「真意」とその「背景」に、注意深く目を向けていこうと、思いをあらたにするのである。  (続報)外資が狙う日本の水道事業 ~マスコミが一切報じない我が愛すべき「麻生さん」の「水道民営化」発言(<IWJの視点>佐々木隼也の斥候の眼 IWJウィークリー14号より ・「日本のすべての水道を民営化します」 ~マスコミが一切報じない我が愛すべき「麻生さん」の超弩級問題発言 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/95944  いつものように「失言・暴言」、または「言い間違い」の類いであって欲しいという一心で取材を進めてみたのだが、実際には、麻生副総理の発言が、小泉構造改革から連綿と今の安倍政権に受け継がれている「国富の外資への切り売り」政策と呼応していることが明らかとなった。 竹中平蔵氏が4月17日に「産業競争力会議」で言及した、「インフラの運営権の民間への売却」が、麻生副総理の「水道民営化」発言へとつながっていることに、僕の麻生さんへの期待は砕かれつつある。 それでも、隠れ麻生ファンの一人として、一握りの親愛と敬意の念を込めて、今号でも「麻生副総理」ではなく、「麻生さん」と呼ばせていただきたい。また、僕がなぜ麻生ファンとなったのか、ということは稿を改めて書くことにしたい。本稿では、水道民営化の危険性、という点に筆を集中する。 ■大阪市で進む水道民営化  前述した、4月17日の産業競争力会議で竹中平蔵主査は、「インフラの運営権の民間への売却」と発言した際、その先行モデルとして「大阪府市の上下水道・地下鉄等の統合および運営民営化」と明記された資料を提出している。  大阪市の水道民営化の動きは、1年半前に遡る。2012年3月9日、橋下徹市長は、「市の水道事業の民営化を目指す」との考えを発表した。 読売新聞の3月10日付の記事によると、橋下市長は民営化のメリットについて、「努力した分だけ実入りが増えるし、競争で水道料金が下がり、市民に還元できる」などと語り、「公務員では成果をあげても給料が上がるわけではなく、仕事を取ろうとする動機付けがない」と、現状の府市が管理する水道事業を批判している。民営化推進の背景には、大阪府市の労組を弱体化する狙いがあるのではないか、との見方も囁かれた。  そして今年の6月19日、大阪市は水道事業の民営化を正式に決定した。実現すれば全国初で、2015年度中の移行を目指すという。産業競争力会議で竹中氏が提示したように、日本の水道民営化の「先行モデル」として、大阪市が先陣を切っていくことになる。  あまり直視したくない現実だが、麻生さんと、竹中氏をはじめとする「規制緩和推進」の動きが呼応し合い、その動きに野党を標榜しているはずの「日本維新の会」の橋下徹大阪市長が追従している、という残念な構図が浮かび上がってくる。 麻生さんの「水道民営化」発言は、決して「失言・暴言・言い間違い」などという可愛らしいものではなく、実際に今、日本で現在進行形で起こっている水道事業の民間・外資への切り売り政策を、正直に語ってしまったものなのである。だからこそ、いつもは「言い間違い」をこぞって叩くマスコミが、一社も報道せず、無視を決め込んだのだろう。 ■世界の水メジャーが参入した愛媛県松山市  そんな中、水道事業の民間開放の動きとして注目されているのが、愛媛県松山市である。松山市は2012年度から、世界最大の水道会社である仏ヴェオリア・ウォーター社に、浄水場などの運転業務や施設のメンテナンスを委託している。世界の水メジャーによる、日本の水道事業への本格参入として日本経済新聞で報じられ、ネットを中心に物議を醸している。  一部では、ヴェオリアの参入により「松山市の水道料金が上がっている」、「水道事業の経営が外資に乗っ取られる」という懸念の声もあがっている。 【松山市HP 一部地域での水道料金の値上げについて】 http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kurashi/josuido/tetuzuki/ryoukin/ryokin_ebara.html しかし、松山市はこうした疑惑を公式HP上で否定している。松山市はHP上で、「本市では、すでに平成16年度から、水道事業の業務のうち浄水場の運転や設備の保守について民間委託しています」とし、「今回のヴェオリア・ウォーター・ジャパン株式会社との委託契約も、現在の契約期間の満了に伴うものです」と記している。 また、外資による経営乗っ取りや、水道料金の値上げについても、「水道事業の経営は、これまでどおり松山市公営企業局が責任を持って行いますので、委託によって水道料金が値上がりすることはありません」と完全否定しているのだ。 【松山市HP「松山市水道事業への外資参入について」】 http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kurashi/josuido/info/suidoujigyou.html こうしたネット上で飛び交う様々な疑惑について、僕はIWJの記者として松山市に直接取材をした。  松山市の担当者は取材に対し、水道料金の値上げについて「一部地域で段階的に値上げはしていくが、それは地域の統廃合で、『割安だった地域の松山市の水道料金を、松山市の標準に合わせていく』というだけで、民営化とは一切関係がない」と、ヴェオリア参入との関連性をきっぱりと否定した。  また、外資による乗っ取りでは? という懸念の声についても、「完全な民営化ではない。これまで通り、経営・運営は市が事業体として行なっていく。ヴェオリアが担当するのは、浄水場の運転業務と保守のみ。今回は、外資とかは気にせず、入札額の安さのみで決めた。民営化は市の職員がやるよりも、人件費が削減される。コスト削減になるので、水道料金は下がることはあっても、上がることはないだろう」と否定した。  しかし、いずれにせよ今後の水道事業の本格的な開放により、ヴェオリアのような水メジャーが、大挙して押し寄せてくることは必至である。世界的な調達網を持ち、低コスト運営に強みを見せる水メジャーに、日本の民間の水道会社が太刀打ちできるだろうか。何より、政府の産業競争力会議が推し進めようとしているのは、松山市のような水道事業の「一部」民営化ではなく、経営も含めた「全面的な」民営化なのだ。  水道事業を外資が独占した時に、日本人の命である水の安定供給を守り切るような対策を、政府は想定しているだろうか。また、収益を第一に考える民間企業が経営に参入した場合、設備投資等に掛かった費用を、水道料金に上乗せするという事態を防ぐような対策を準備しているだろうか。  僕は、民間企業と今後の民営化について協議を進めている厚労省へ取材し、こうした懸念について、いかなる安全策を思案しているかを確かめることにした。  しかし、厚労省の担当者が発した言葉は、驚くべきものだった。「日本の水道は安すぎるので、値上げすべき」というのだ。厚労省への取材では、政府が進める「水道の完全民営化」と「水道料金値上げ」の詳細と、外資を含めた民間企業の水道事業の参入について、何の危機感も抱いていない無防備な実態が明らかとなった。本稿では、字数の関係上、その詳細なやり取りについては省略し、次号の「IWJウィークリー」で掲載することにしたい。 また、世界各地で起きている水を巡る住民と民間企業の紛争や、そうした事態が決して他人ごとではない、TPP参加後の日本に振りかかるであろう受難についても、近く、ブログ記事やメルマガなどで改めて掲載することにしたい。 ■日本の水を守る手立てはあるのか  最後に、マスコミや国会議員の多くが、この麻生さんの発言を取り上げないなか、唯一、山本太郎参議院議員がこの件について質問主意書として内閣に投げかけているので、それを紹介したい。  山本議員は、8月6日に提出した「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定及び日米並行協議に関する質問主意書」のなかで、麻生さんの「水道民営化」発言に触れ、以下のように政府に質問している。 【山本議員質問主意書より抜粋】 1 TPPでは政府調達の分野も含まれており、外国企業の参入を拒めなくなるはずである。水道のようなライフラインを外国企業に買収されてしまえば国家安全保障に関わる問題となる。この点について、政府の見解を明らかにされたい。 2 米国には国家安全保障を脅かす外国企業の活動を制限できるエクソン・フロリオ条項があるが、日本版エクソン・フロリオ条項のようなものの導入は検討していないのか、政府の見解を明らかにされたい。 3 愛媛県松山市において、ヴェオリア・ウォーター・ジャパン株式会社への水道事業の業務委託が始まっている。松山市は業務委託によって水道料金が値上がりすることはないとホームページで公言しているが、同ホームページによれば、平成二十五年度から平成二十八年度にかけて水道料金の大幅値上げが計画されている。ヴェオリア・ウォーター社が参入したことと、この料金値上げとの間に本当に関連性はないのか、政府の見解を明らかにされたい。 【環太平洋パートナーシップ(TPP)協定及び日米並行協議に関する質問主意書(山本太郎議員HPより)】 http://bit.ly/131TT2L  質問1、で言及しているように、水道のようなライフラインへの外資参入は、まさしく日本の安全保障を脅かしかねない問題である。これについて、政府がどのような見解なのかということは、非常に重要だ。  質問2、で言及している「エクソン・フロリオ条項」とは、自国の安全保障を脅かすような、外国企業による国内企業の買収を差し止めることを目的とした条項である。もともとは、米国議会が1988年に、日本資本による米国企業の敵対的買収を阻むために導入した。究極的には大統領の判断で、取引を停止または禁止することができる、いわば超法規的な安全装置である。 【外資に関する規制――エクソン・フロリオ条項(JETRO)】 http://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/invest_02/  外国からの投資を奨励し、「外国投資家を公正かつ同等に扱う」と公言している米国ですら、外資による乗っ取りの懸念に対し、安全装置を設けている。日本においても、こうした対抗策を準備しているかどうかは、これも非常に重要な問題である。  日本の冨を守る、この「日本版エクソン・フロリオ条項」に言及する議員は少ない。山本議員の他には、奇しくも、麻生さんとはかつて盟友であった故・中川昭一元財務大臣があげられる。  中川氏は、2004年5月26日、小泉純一郎総理(当時)を議長とする「第37回総合科学技術会議」の中で、特許や知的財を守るうえで、日本版エクソン・フロリオ条項の必要性に言及している。竹中氏が郵政民営化を着々と進めていた時期に、中川氏は米国による日本の冨の収奪の危険性を察知し、その対応策を提起していたのだ。 【第37回総合科学技術会議議事録】 http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu38/siryo4.pdf  麻生さんを支持し続け、麻生内閣成立の立役者であり、麻生政権では財務大臣として、共に国益を守ってきたはずの二人である。2010年10月4日に中川氏が急死した際、6日に北海道で行われた「哀惜の会」で、麻生さんは以下のような弔辞を述べている。 「昭ちゃん。まさかあなたの弔辞を13歳も年上の私が読むことになろうとは全く思ってもみませんでした。(中略)『政治家我が身無念と思えども、国の為なら本懐なり』。貴方にこの言葉を贈りたいと思います。(中略)我々は、貴方の遺志に応える義務と責任があると存じます。『死せる中川生ける保守を走らす』。それが貴方が最も望んでいることでしょう。残された我々は歯を食いしばって頑張ります」  中川氏の無念に応え、その遺志を引き継ぐと心強く誓った麻生さんである。中川氏の思いであった「日本版エクソン・フロリオ条項」のような、国富の防衛策を、麻生さんもきっと検討していることだろう。  しかし、8月13日に政府から返ってきた答弁書は、以下のようなものだった。 【政府答弁書より抜粋】 1についてお尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、交渉に係る個別具体的な内容については、お答えを差し控えたい。いずれにしても、我が国として国益を最大限実現するために全力を尽くす考えである。 2についてお尋ねの趣旨が必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「日本版エクソン・フロリオ条項」が具体的にいかなるものを指すのか必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。 3について水道料金は、水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)の規定に従い適切に定められているものであるが、その設定には様々な要因が影響するものであることから、御指摘の「関連性」について、政府としては、一概にお答えすることは困難である。  一読して明らかなように、政府は一つとしてまともに答弁していない。「お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが」とけむにまき、質問2に対する答弁では、「『日本版エクソン・フロリオ条項』が具体的にいかなるものを指すのか必ずしも明らかではない」などと、答弁自体を拒否している。中川氏の隠れファンでもある僕には、この政府の答弁書は、中川氏の思いを踏みにじるものにしか見えない。  財務大臣と金融担当大臣と副総理を兼ね、多忙を極める麻生さんである。自身の発言について提出されたこの質問主意書も、麻生さんの元には届かず、目に入ることもなかったのだろう。  もし目に入っていれば、会見でいかなる質問にもジョークを混じえながら真摯に答える麻生さんである。きっと、真剣な面持ちで耳を傾け、今後の日本の未来を守る手立てについて、堂々と答えるだろう。そうであって欲しいという一縷の望みと、目の前に広がる直視したくない現実にさいなまされながら、今後も事実から決して目を離さず、徹底した取材を進めていきたい。  

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