放射性物質
放射性物質便覧
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1 | 放射性元素名 | 元素記号 | 安定同位体 | 半減期 | 主な崩壊と崩壊後生成元素 | 放射線エネルギー | 主な生成方法 | 性質 | 身体への影響 | 対策 | 危険度 |
2 | 炭素14 | C |
炭素12(98.93%) 炭素13(1.07%) |
5,730年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → 窒素14(N) ※窒素14:安定同位元素 |
γ線は放射せず、崩壊時に 0.156MeV のβ線を放射する。 |
天然でもごく微量存在し、有機物中に存在する炭素14は、生物学/考古学等で年代測定に利用される。 原子炉の中では、核分裂では生成されずに、炭素・窒素・酸素などと中性子の反応によって生じるが、その量はあまり大きくないと推定される。しかし、原子力施設の廃棄物(主に排気による)として、これまでに排出された量は計り知れない。 |
二酸化炭素や有機物をはじめ、様々な化合物として天然に存在する。 |
放射されるβ線の放射線エネルギー量は小さく、放射距離が非常に短いため、外部被爆のリスクは殆ど無い。 炭素は全身に広く分布するため、特定の器官に濃縮・残留することはないために、内部被爆の影響も比較的少ないといえる。 また、二酸化炭素として吸引した場合の被爆量は非常に小さいので、問題とする必要はないが、有機物として長期間にわたって大量摂取した場合には、その限りではない。 なお、原子力施設の周囲で栽培された野菜等に多量に含まれている可能性がある。 |
放射能汚染源の付近で生産された野菜等を摂取し続けることのないように配慮する。 といっても、原発周囲で生産された野菜や穀物にこだわって、それしか食べないということがない限り、大きな問題はないものと思われる。 そもそも半減期が長い上に、長期間の体内残留の可能性が低いため、それほど神経質にならなくてもよい。 |
★ |
3 | カリウム40 | K | カリウム41 | 12.5億年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → カルシウム40(Ca)
[89.3%] ※カルシウム40:安定同位元素 ・β崩壊(軌道電子捕獲) → アルゴン40(Ar) [10.7%] ※アルゴン40:安定同位元素 |
陰電子崩壊時には 1.31MeV のβ線を放射し、軌道電子捕獲時には1.46MeV のγ線を放射する。 |
天然に存在する代表的な放射性元素で、地球創生時に生成されたものが未だに自然界に残存しており、大気中に存在するアルゴンの多くは、このカリウム40の崩壊により生成されたものと考えられている。 地質学等で年代測定に利用される。 なお、人工的に生成されることはほとんどない。 |
水よりも比重の軽い柔らかいアルカリ金属で、ナトリウム以上に反応性が高く、常温でも水と反応して激しく発火する。 また、化合物は水に溶け易い。 |
必須元素の一つ。 半減期が非常に長いことから、実質的な放射能強度は低いが、地球上の生物にとって、カリウム40は炭素14以上の最大の放射線源であり、内部被曝による線量が大きいものの一つに挙げられる。 成人男性の体内では、1秒間に約4400個のカリウム40が原子崩壊しているものと予測される。 |
はっきり言って、対処不能。 逆にいえば、すべての生物は、創生記から、これくらいの放射線は内部・外部を問わずに浴びてきているという事実を認識しておくべきである。 |
☆ |
4 | マンガン54 | Mn | マンガン55 | 312.3日 |
・β崩壊(軌道電子捕獲) → クロム54(Cr) ※クロム54:安定同位元素 |
崩壊時に 0.834MeV のγ線を放射する。 |
天然では存在せず、人工的に生成される放射性元素。 鉄54(安定同位元素)に中性子照射することで、中性子反応により生成される。 原子炉(軽水炉)の運転では、一次冷却水配管の中に含まれる鉄から生成されるのと同時に、一次冷却水の中にある鉄からも生成される。 |
酸性水溶液中に含まれ易い。アルカリ性水溶液中では酸化されて加水分解して沈殿しやすい。 また、それらの化合物は粉塵として大気中を漂い、地表等に堆積することも多い。 |
必須元素の一つで、警戒すべきは内部被爆である。 体内摂取後の挙動は複雑であり、1週間以内に排出される成分と数ヶ月間残留する成分がある。 体内では、主に骨と脳に集まりやすい。 |
水溶性であるため、飲料水や食物には十分な注意が必要。 また、粉塵吸引のリスクも高いのでマスク等の着用で吸引しないよう十分に配慮する必要がある。 |
★★★ |
5 | コバルト60 | Co | コバルト59 | 5.2714年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → ニッケル60(Ni) ※ニッケル60:安定同位元素 |
崩壊時に 0.318MeV のβ線と、1.17MeV と 1.33MeV の2本のγ線を放射する。 |
天然では存在せず、人工的に生成される代表的な放射性元素の一つ。 コバルト59(安定同位元素)に中性子照射することで、中性子捕獲反応により生成される。 原子炉(軽水炉)の運転では、一次冷却水配管の中に含まれるコバルトから生成されるのと同時に、一次冷却水の中にあるコバルトからも生成される。 |
酸性水溶液中に含まれ易い。アルカリ性水溶液中では酸化されて加水分解して沈殿しやすいが、水溶液中にアンモニアやある種の有機物が存在した場合には、沈殿せずに水溶液中に存在し続ける場合も多い。 |
必須元素の一つで、コバルトを含む代表的な化合物にビタミンB12がある。 最も警戒すべきは内部被爆であるが、強力なγ線を放射することから、外部被爆にも注意が必要。 鉄筋などの建築鋼材に含まれることで長期間の外部被爆により身体に深刻なダメージを与えた事例も存在する。 体内摂取後の挙動は複雑であり、すみやかに排出される成分と数年間残留する成分がある。 体内では、主に骨と脳に集まりやすい。 |
数ある放射線物質の中でも最凶クラスに位置づけられる! 半減期も長く、長期にわたって影響があり、ビタミンB12を多量に含有する食品に関しては特に注意が必要である。 また、同様に飲料水にも注意が必要。 また、外部被爆の観点から、食料品以外の様々な製品に紛れる可能性もあるため、放射線測定器等での環境測定を行うことができれば、なお良い。 |
★★★★★ |
6 | クリプトン85 | Kr |
クリプトン80(2.29%) クリプトン82(11.59%) クリプトン83(11.50%) クリプトン84(56.99%) クリプトン86(17.28%) |
10.76年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → ルビジウム85(Rb) ※ルビジウム85:安定同位元素 |
崩壊時に 0.687MeV のβ線を放射する。 |
天然では殆ど存在せず、人工的に生成される代表的な放射性元素。 そもそも、クリプトンは地球上に存在する気体の中で最も量が少なく、主に自然界で生成される放射性同位体のクリプトン81も、その量は極めて微量。 「核の時代(1955年~)」以降、大気中のクリプトン85の濃度は、核実験や原子力廃棄物のため、1000倍以上になった。 核分裂によって生成され、現在における生成要因は使用済核燃料の再処理によるものが大部分を占める。 |
不活性ガスの一種で、他の物質と反応せずに、無色無臭の気体として、そのまま大気に含まれる。 |
不活性ガスのため、吸引しても体内に取り込まれることは無いため、内部被爆の可能性は殆ど無い。 そのため、放射性物質としては軽視されがちだが、高濃度のクリプトン85については外部被爆が問題となる。 また、長期的視野に立った場合、半減期も長く、地球環境の放射能汚染という意味で無視できないものと思われる。 自然環境からの通常被爆というカテゴリに括って、カリウム40と同じような扱いをされている感があるが、そもそも60年前には自然環境には存在していなかったという事実は無視できない。 |
汚染源からできるだけ離れることが重要。 拡散してしまえば、さしたる影響はないと考えてもよい。 |
★ |
7 | ストロンチウム90 | Sr |
ストロンチウム84(0.56%) ストロンチウム86(9.86%) ストロンチウム87(7.00%) ストロンチウム88(82.58%) |
28.78年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → イットリウム90(Y) ※イットリウム90:放射性同位元素 |
崩壊時に 0.546MeV のβ線を放射する。 |
人工的に生成される代表的な放射性元素。 天然でも、ウラン238の自発核分裂によって生じるが生成量は少ない。 原子炉内での核分裂によって、定常的に生成 される。 大気圏内核実験でも大量に放出されるため、過去に地球規模で拡散した経緯を持つ。 また、大気中に放出されたストロンチウムは放射性降下物として地表に堆積する。 なお、ストロンチウム90は、不活性ガスのクリプトンやキセノンの半減期の短い放射性同位体の原子崩壊から二次生成されるために、放出・拡散の可能性が非常に高い。 また、ストロンチウムは揮発性化合物をつくりにくく、通常の原子力施設の運転で外部漏洩することは殆ど無いが、重大事故での炉心破損による放出リスクは計り知れない。 |
ストロンチウムは化学的にカルシウムと似た性質を持つ。化合物は水に溶け易いものが多い。 また、ストロンチウム90はβ崩壊により放射性元素であるイットリウム90を生成するため、安定同位元素に推移するまでに、2回の原子崩壊を行う。 ストロンチウム90がβ崩壊した際の放射線エネルギー量はそれほど大きくないが、二次生成されるイットリウム90は強力なβ線を放射する。 |
必須元素のカルシウムに化学的に似た性質を持つため、一部の成分は速やかに排出されるが、多くは骨の無機質部分に取り込まれ、長期間にわたって残留する。 そのため、内部被爆が大きな問題となる。 体内に摂取した場合には、結果として、2段階で炸裂する爆弾が骨に埋め込まれたことを意味する。 |
半減期も長く、非常に厄介な放射線物質。勿論、最凶クラスに位置付けられる。 できるだけ体内摂取しないように注意を払うしかない…。 主な体内摂取経路は、牧草→牛→乳製品、土壌→野菜・穀物、大気→野菜表面、海水→魚介類等が挙げられる。 |
★★★★★ |
8 | イットリウム90 | Y | イットリウム89 | 64時間 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → ジルコニウム90(Zr) ※ジルコニウム90:安定同位元素 |
崩壊時に 2.28MeV のβ線を放射する。 |
前述のストロンチウム90のβ崩壊によって二次生成される放射性元素。 天然にはほとんど存在しない。 |
イットリウムはさまざまな無機化合物を生成する。 そもそも、水溶性イットリウム化合物は放射性でなくても人体に有害である。 |
半減期は短く、非常に強力なβ線を放射する。 よって、ストロンチウム90がβ線を放射してβ崩壊した場合には、短時間で、さらに強力なβ線が連続放出されると考えるべきである。 |
ストロンチウム90を体内摂取しないことに限る! | ★★★★★ |
9 | テクネチウム99 | Tc | 無し | 21.1万年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → ルテニウム99(Ru) ※ルテニウム99:安定同位元素 |
崩壊時に 0.294MeV のβ線を放射する。 |
安定同位体を持たない元素。 そのため、理論的には存在が示唆されながらも、長きにわたって発見することができなかった元素である。また、人工的に初めて生成された元素でもある。 天然でも、ウラン238の自発核分裂によって生じるが生成量は少ない。 人工的にはウラン235の核分裂から生じる。 原子力施設の運転においては、排気中には含まれず、排水中に少量が放出される。 |
テクネチウム酸イオン(TcO4-)として水によく溶ける。 |
放射されるβ線の放射線エネルギー量は小さく、半減期も短いため、放射能強度は低い。 体内に摂取された場合は、大部分はすみやかに排泄されるが、ごく一部は2ヶ月ほど残留する。 よって、多量に摂取しない限りは、内部被爆による身体への影響は小さい。 |
半減期が非常に長い上に、長期間の体内残留の可能性が低いため、あまり神経質にならなくてもよい。 | ☆ |
10 | ヨウ素129 | I | ヨウ素127 | 1,570万年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → キセノン129(Xe) ※キセノン129:安定同位元素 |
崩壊時に 0.154MeV のβ線を放射する。 また、僅かな確率で、0.0376MeV のγ線を放射する。 |
長寿命の人工放射性元素の一つ。 天然でも、ウラン238の自発核分裂や、大気中のキセノンと宇宙線の反応によって常に一定量が生成されるが生成量はあまり多くない。 人工的には、ウランやプルトニウムの核分裂によって生成される。 |
ヨウ化物イオン(I-)、または単体として自然界に存在する。単体は昇華しやすく、酸性水溶液を加熱すると大気中に揮発する性質を持つ。 海洋に流出した場合には、海藻類に濃縮される。 |
ほぼ半永久的に残留する放射性物質といえるが、放射線エネルギー量が小さいことが救い。 また、半減期も非常に長いことから、長期間にわたって多量に摂取しなければ、深刻な影響は無いものと思われるが、ヨウ素は必須元素であると同時に、生体親和性が高く、体内に取り込まれやすいので注意が必要。 体内に取り込まれると、ほとんどすべてが甲状腺に集まり、甲状腺ホルモンの体内生成に利用されるため、甲状腺の内部被爆に直結する。 |
原子力施設からの廃棄物によって、ヨウ素129による海洋汚染が以前から指摘されているため、今更対策のしようもないように思われる。 特に、イギリスとフランスの原子力廃棄物再処理工場からの流失により、ヨーロッパの海洋は広範囲にわたってヨウ素129の汚染が進んでいると指摘されている。 どちらかというと、後述のヨウ素131の対策の方が重要と考える。 |
★★ |
11 | ヨウ素131 | I | ヨウ素127 | 8.04日 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → キセノン131(Xe) ※キセノン131:安定同位元素 |
崩壊時に 0.248~0.606MeV のβ線と、0.0802~0.637MeV のγ線を放射する。 |
ヨウ素の最もよく知られている放射性同位体。 天然でも、ウラン238の自発核分裂や、大気中のキセノンと宇宙線の反応によって生成されるが生成量は少ない。 人工的には、ウラン235やプルトニウム240の核分裂によって大量に生成される。 水溶性であると同時に昇華し易いため、外界に放出され易い性質を持つが、原子力施設の通常運転では半減期が短いこともあり多量に排出されることは無い。 ただし、原子炉の事故発生時には、大量に自然環境へ放出されることが予想され、チェルノブイリ原発事故の際には、30京ベクレルという凄まじい量のヨウ素131が放出されたと言われている。 |
※ヨウ素129を参照 |
前述の通り、必須元素の一つ。 半減期が8日と短いが、裏を返せば、それだけ頻繁に原子崩壊することを意味するので、放射能強度は非常に高い。 外部被爆はもとより、内部被爆のダメージは深刻で、甲状腺ガンを引き起こす要因となる。 特に、子供の被害は深刻で、1歳児の場合、放射線被害は成人の10倍以上と考えて間違いない。 |
ヨウ素131が崩壊しきる(ほぼ3ヶ月)まで、体内摂取しないように最大限の注意を払う必要がある。 海藻類はもとより、乳製品の汚染が代表的である。 牧草→牛→牛乳の濃縮経路の移行は速やかに進むため、原子力施設の事故の際には、十二分に注意する必要がある。勿論、飲料水からの摂取や大気からの吸引にも注意が必要。 言うまでもなく最凶クラスの放射性元素といえる。 |
★★★★★ |
12 | セシウム134 | Cs | セシウム133 | 2.0652年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → バリウム134(Ba) [99.9997%] ※バリウム134:安定同位元素 ・β崩壊(軌道電子捕獲) → キセノン134(Xe) [0.0003%] ※キセノン134:安定同位元素 |
陰電子崩壊時に、0.089~0.658MeV のβ線と、0.563~1.365MeV の複数のγ線を放射する。 |
人工的につくられる放射性元素の一つ。 天然でも大気中で宇宙線とキセノンの反応で生成されるが、生成量は極めて微量。 キセノン134(安定同位元素)の中性子捕獲によって生成される。 他の物質の原子崩壊や核分裂で直接生成されることが無いため、環境から検出された場合は、原子力施設から排出されたものと考えてほぼ間違いない。 |
非常に軟らかく、黄色がかった銀色をしているアルカリ金属。化学的にカリウムと似た性質を持つ。 非常に反応性が高く、低温の水とも反応して発火する。 化合物は水溶性のものもあるが、多くは水に溶けにくい。ただし、海水には溶け易いものも多い。 また、セシウムは水溶液中で揮発性化合物をつくらない。 |
必須元素のカルシウムに化学的に似た性質を持つため、体内に取り込まれやすく、体内に入ると、約10%は速やかに排出されるが、ほとんどは血液とともに全身に分布し、筋肉をはじめ様々な器官に蓄積される。その滞留期間は100日以上。 したがって、内部被爆が最大の問題となる。 また、強力なγ線を放射することから外部被爆についても無視できない。 |
文句無しの最凶クラス! 体内に摂取したときのダメージは同様に非常に深刻である。 土壌→穀物・野菜・キノコ、大気→野菜、牧草→牛など様々な経路での体内摂取の可能性が考えられる。 一部の化合物は水溶性であることから飲料水からの摂取も考えられ、さらに、海洋においては魚の食物連鎖による生物濃縮も深刻である。 私ごときでは、腹を括る意外には、これといった対策は思いつきません。 |
★★★★★ |
13 | セシウム137 | Cs | セシウム133 | 30.1年 |
・β崩壊(陰電子崩壊) → バリウム137m(Ba)
[94.4%] ※バリウム137m:放射性同位元素 ・β崩壊(陰電子崩壊) → バリウム137(Ba) [5.6%] ※バリウム137:安定同位元素 |
バリウム137mへの崩壊時には、0.514MeV のβ線を放射し、その後、バリウム137m
のγ崩壊時に、 0.662MeV のγ線を放射する。 バリウム137mへの崩壊時には、1.18MeV のβ線を放射する。 |
人工的につくられる放射性元素の一つで、セシウムの代表的な放射性同位体。 天然でもウラン238の自発核分裂により生じるが生成量は少ない。 人工では、核実験や原子炉内での核分裂によって生成される。 |
セシウム137の殆どはβ崩壊した後に生成される短寿命の放射性同位体のバリウム137m(半減期:2.55分)のγ崩壊を経由して安定同位体のバリウム137となる。 ※化学的性質についてはセシウム134を参照 |
※セシウム134を参照 |
セシウム134と同様に文句無しの最凶クラス! 内部被爆については、セシウム134と同様ですが、半減期が長いことから、少量ならまだしも、大量に環境に放出された場合の危険性は想像もつきません。 また、セシウム137が製鉄所の鋼材に紛れ込んだ事例も多数あり、外部被爆についても注意が必要と思われます。 |
★★★★★ |
14 | ラジウム226 | Ra | 無し | 1,600年 |
・α崩壊 → ラドン222(Rn) ※ラドン222:放射性同位元素 |
崩壊時に 4.61~4.78MeV のα線を放射する。 また、僅かな確率で、0.186MeV のγ線を放射する。 |
ウラン238を起点とするウラン系列の放射性元素の中でも代表的なものの一つ。 天然ではウラン238が自発核分裂を続けた結果生じる。 1898年にキュリー夫妻により発見された。 人工では、核燃料の濃縮ウランの核分裂から生成される。 |
安定同位体を持たないアルカリ土類金属の一つ。 化学的な性質は、バリウムやカルシウムに似る。 半減期は長いが、原子崩壊した場合には短寿命の放射性同位元素であるラドン222を生成し、その後、連鎖的に原子崩壊を繰り返すため、放射能強度は高い。 |
ラジウム226とその崩壊生成物は強力なα線を放射するため、連鎖的な内部被爆が問題となる。 体内に摂取された場合には、低い比率だが骨に蓄積されることがあり、骨内部に入った場合には長期間残留するが、崩壊後に生成されるラドン222の70%は血液を通って体外に放出される。 また、経口摂取よりも吸入した場合の方が、実質的な被爆量は大きい。 |
「ラジウム鉱泉」などでお馴染みの放射性物質。 ※詳細は「ラドン222」を参照 |
★★★ |
15 | ラドン222 | Rn | 無し | 3.823日 |
・α崩壊 → ポロニウム218(Po) ※ポロニウム218:放射性同位元素 |
崩壊時に 5.49MeV のα線を放射する。 |
ウラン238を起点とするウラン系列の放射性元素の中でも代表的なものの一つ。 天然ではウラン238が自発核分裂を続けた結果生じる。 人工では、核燃料の濃縮ウランの核分裂から生じたラジウム226のα崩壊から生成される。 |
無色無臭の気体で他の物質と反応することはない。不活性ガスの中で最も重く、安定同位体が存在しない元素である。 半減期は短く、さらに、ポロニウム218(Po、半減期:3.05分)→鉛214(Pb、半減期:26.8分) →ビスマス214(Bi、半減期:19.9分)→ポロニウム214(Po、半減期:0.00016秒)→鉛210(Pb、半減期:22.3年)という崩壊の過程で、短寿命な4種類の放射性同位体の原子崩壊が連鎖的に生じる。 |
近年では、天然に存在する放射能による被曝の中で、ラドンによるものがもっとも大きくなる恐れがあると考えられるようになっている。 特に、吸引した場合における肺の内部被曝を最も警戒すべきで、以前からウラン鉱山で働く労働者に肺がんが多発していることが指摘されている。 |
温泉の含有成分としてラドンを含むものは放射能泉として分類される。 ラジウム鉱泉もその一つ。 ラドンおよびそれ以後の各種放射性同位体が放つ強力な放射線が健康に寄与するといった全く根拠の無い理由から、好んで被爆を受ける宗教的な風習があることも事実。 もう良くわからん…。 |
★★★ |
16 | プルトニウム238 | Pu | 無し | 87.7年 |
・α崩壊 → ウラン234(U) ※ウラン234:放射性同位元素 |
崩壊時に 5.50MeV のα線を放射する。 |
プルトニウムはウラン鉱石中にわずかに含まれていることが知られる以前は、完全な人工元素と考えられていた。 ただし、プルトニウム238については人工的に生成される放射性同位体と考えてよい。 原子炉(軽水炉)内では、ウラン235の二重中性子捕獲を経て生じるネプツニウム237の中性子捕獲で生じるネプツニウム238のβ崩壊によって生成される。 プルトニウム239に中性子照射することによっても生成される。 |
人間の寿命程度のタイムスケールで直接保守することなく機能する必要がある機器の電力源に適しているため、原子力電池に利用される。 そのため、ペースメーカーに利用されることもあるらしい。(信じられません) ※化学的性質については難しすぎて良くわかりません。 |
不溶性酸化物を吸入した時のα線の被爆量は凄まじいが、経口摂取した場合の被爆量は比較的小さい。 その理由は、経口摂取した時は体内に吸収されにくく、吸入した時は肺などに長く留まることにある。 同位体のプルトニウム239に比べて半減期が遥かに短いために、プルトニウムの同位体の中で、最も放射能強度が高い。 |
放射性物質の中でプルトニウムの同位体は当然の最凶クラスだが、非常に重い物質であり、必須元素でないことから、拡散や生物濃縮のリスクが小さいことが唯一の救い。 同位体のプルトニウム240に至っては、自発核分裂により恐怖の中性子線までランダム放射する。 近づかないことに限る! |
★★★★ |
17 | プルトニウム239 | Pu | 無し | 2.41万年 |
・α崩壊 → ウラン235(U) ※ウラン235:放射性同位元素 |
崩壊時に 5.16~5.46MeV のα線を放射する。 |
ウラン鉱石中にわずかに含まれていることが知られているが、天然に存在するものは極めて微量なため、人工的に生成される放射性元素と考えてよい。 ウラン238の中性子捕獲で生じるウラン239がベータ崩壊してネプツニウム239が生まれ、その崩壊で生成される。 |
核分裂の起きやすさと合成の容易さのため、現代の核兵器における主要な核分裂性物質である。 さらに、α崩壊で生成されるウラン235も濃縮ウランとして利用される核分裂性物質である。 ※化学的性質については難しすぎて良くわかりません。 |
不溶性酸化物を吸入した時のα線の被爆量は凄まじいが、経口摂取した場合の被爆量は比較的小さい。 それでも体内に取り込まれてしまった時の影響は長期にわたり、骨、肝臓、生殖腺等に深刻なダメージを与える。 |
放射性物質の中でプルトニウムの同位体は当然の最凶クラスだが、非常に重い物質であり、必須元素でないことから、拡散や生物濃縮のリスクが小さいことが唯一の救い。 同位体のプルトニウム240に至っては、自発核分裂により恐怖の中性子線までランダム放射する。 近づかないことに限る! |
★★★★ |
by Y.Fumino .
☆『放射性物質便覧』の作者・文野氏の説明文☆
さてさて本題ですが、これから私たちは、原発事故が収束した 後も、放射性物質と向き合っていかなればならない状況にある ものと思っております。 既に、水道水や牛乳、野菜などからも放射性物質が検出された という報道がなされ、様々な情報や憶測が飛び交っております。 また、記者会見やインタビュー等でも、情報の開示が強く求め られておりますが、実際に、情報や詳細のデータが開示された ところで、それらを解釈できる人が一体どの程度いるのか甚だ 疑問に感じております。 そこで、それらの情報を解釈する手助けの一環として、放射性 放射性物質便覧なるものを作成いたしましたので、勝手ながら お送りさせていただきます。 これは、一部の方々の強い要望がありましたこと、また、自分 自身のあやふやな知識を再度整理する意味で作成したものです。 所詮は素人が作成したものなので、絶対的に正しいものと保証 できるものではございませんが、できるだけ偏った情報になる ことのないよう、物理学、化学、生物学、医学等の複数の知見 からの情報収集を行い、客観的に纏めたつもりです。 また、こちらの便覧に記載されている放射性物質は、私たちが 日常生活で出くわす可能性が高いもののみをピックアップして おります。 そもそも放射性物質には膨大な種類のものが存在します。 未発見なものやこれから人間の手で新たに作り出されるものも あるかもしれません。 その中から、生成量が少ないと思われるもの、すぐに消滅して しまうものなどは取り上げてはおりません。 さらに、ある方から文野個人の見解でも構わないので、対策と 危険度を追記して欲しいという要望もございましたので、追記 させていただきましたが、こちらについては私の完全な主観に 基づく内容であることを予めご了承ください。 また、できるだけ、わかり易く情報を纏めたつもりではござい ますが、あまり詳しくない方は、それでも内容を把握できない 可能性がございますので、便覧を閲覧するにあたっての放射性 物質の基礎知識を以下に簡単に記しますので、ご参照ください。 ●放射性物質とは 放射性物質とは、その名の通り、放射線を放出する可能性が ある物質(元素)のことを指します。 一般的に「放射能」という言葉が使われますが、ほぼ同義と 考えていただいて結構です。 専門的には「放射性同位元素」「放射性同位体」と呼ばれて おります。 放射性物質は無駄なエネルギーを抱えて不安定な状態にある ために、無駄なエネルギーを放出して、安定した状態に近づ こうとします。 その無駄なエネルギーが、放射線や熱(崩壊熱)となって放出 されます。 放射性物質は、常に放射線を放出し続けていると誤解されて いる方も多くいるようですが、そんなことはありません。 放射性物質は放射線を放出することで、より安定した状態に 近づくとともに、その多くは、全く性質の異なる別の物質に 生まれ変わります。 これを「原子崩壊」と呼びます。 よって、一つの放射性物質が原子崩壊によって放射線を放出 するのは1回です。 ただし、放射性物質が1回の原子崩壊によって完全に安定した 状態に生まれ変わることができれば、発射される放射線は1回 のみということになりますが、異なる放射性物質に変身した 場合には、さらに2発目の放射線が発射される可能性があると いうことになります。 上記で「完全に安定した状態」という言葉を使いましたが、 このような状態にある物質を「安定同位元素」または「安定 同位体」と呼びます。 自然界に存在するほとんどの物質は安定同位体です。 なぜならば、放射性同位体は時間の経過とともに最終的には 安定同位体になるという宿命にあるからです。 ●半減期について さてさて、上記で、放射性物質は最終的にはすべて消滅して 安定同位体になるといった内容を記述しました。 では、それにはどれくらいの時間がかかるのかということに なりますが、それは放射性物資の種類によって様々です。 1秒未満で原子崩壊してしまうものもあれば、45億年経っても 崩壊しないものもあります。 また、同一の物質(元素)であっても原子崩壊するかどうかと いうことは確率に支配されています。 したがって、潔い奴はあっという間に崩壊するにも関わらず、 しぶとい奴はいつまでたっても崩壊しません。 実際、自然界には様々な放射性物質が存在しています。 これらの物質のほとんどは、宇宙創造の時代から未だに原子 崩壊することなく残留している非常にしぶとい放射性物資と いうことになります。 また、非常に微量ではありますが、自然界で新たに作りださ れる放射性物質もあります。 もちろん自然界には、人間の手によって作り出された放射性 物質も多数あります。 これが今まさに問題となっている放射性物質ということです。 前置きが長くなりましたが、この放射性物質の寿命を表した ものが「半減期」というものです。 要するに、仮に同一種類の放射性物質が100個あった場合に、 その内の50個が原子崩壊するまでにかかる期間ということを 表します。 何故このような曖昧な表現になるかというと、上述した通り、 原子や素粒子の世界は、確率によって支配されているために はっきり何日で崩壊するということが言い切れないのです。 そのために、仮に半減期が3日という放射性物質であっても、 非常に低い確率ではありますが、1万年経っても崩壊しないと いうケースも考えられます。 ここで重要なポイントがあります。 一見すると半減期の長い放射性物質は、いつまでも残留する ことになるために、単純に危険!と思ってしまいがちですが、 そんなことはありません。 なぜならば、半減期が長い放射性物質は崩壊しにくいという ことなので、放射線をなかなか発射しません。 逆に、半減期の短い放射性物質は頻繁に原子崩壊するために ガンガン放射線を発射するということになります。 よって、半減期だけでは安全/危険を判断することは難しく、 どれくらいの量の放射性物質がどれくらいの距離にあるのか、 また、どれくらいのパワーの放射線を発射するのかといった ことを総合的に判断する必要があります。 ●放射線について 放射性物質は原子崩壊する時に、放射線を放出します。 その放射線には、幾つかの種類があります。 代表的なものには以下のものがあります。 ・α(アルファ)線 ・β(ベータ)線 ・γ(ガンマ)線 この他にも「中性子線」や「X(エックス)線」など、様々な 種類のものがありますが、ここでは上記の3つについて簡単に 説明します…と思ったのですが、やっぱりやめます。 これらを説明するためには、原子の構造などについて詳細に 説明する必要があるため、もの凄い長文になりそうです。 ですので、感じだけお伝えします。 「宇宙戦艦ヤマト」に例えると、 ・α線:波動砲(一点集中攻撃、破壊力大、射程短い) ・β線:拡散波動砲(広範囲攻撃、破壊力大、射程短い) ・γ線:レーザー砲(貫通攻撃、破壊力並、射程長い) とまあ、こんな感じです。 ちなみに、レントゲンで使われるX線はγ線のお友達です。 中性子線は「射程が長く貫通力抜群の波動砲」って感じです。 半端じゃなくおっかないですが、核兵器や原子力関係の人で なければ出くわすことは、ほとんどありません。 また、同じ放射線であっても出力は様々で、高エネルギーの 放射線は破壊力が大きく射程も長くなります。 この出力には「eV」(エレクトロンボルト、または電子ボルト) という単位が使われます。 こんな説明ですみません…。 興味のある方は自分で調べてみてください。 ある特定の放射性物質が原子崩壊する時に放出する放射線の 種類はだいたい決まっています。 その発射する放射線の種類のよって、原子崩壊の種類が類別 されます。 ・α崩壊:α線を発射する原子崩壊 ・β崩壊:主にβ線を発射する原子崩壊 ・γ崩壊;γ線のみを発射する原子崩壊 ただし、α崩壊の際には、γ線(X線)を同時発射する場合も あります。 また、β崩壊には色々な種類があり、β線を発射せずにγ線 (X線)のみを発射するものもあれば、β線とγ線を同時発射 するものなど実に様々です。 また、一定の確率で放射線の出力が変わる場合もあります。 ●放射線の健康被害について よく記者会見などで、放射線の健康被害に関する質問を耳に します。 なかでも、どれくらいなら安全なのかをはっきり答えてくれ といった内容のものだったりします。 はっきり言います! そんなもの正確なところは世界中の誰も知りません。 なぜならば、放射線の与える健康被害というものは、非常に 長期にわたるために、原因の特定が困難である上に、上述の 通り、確率論でしか話ができないからです。 さらに、統計学的に調査するにもサンプルが少ないのです。 だって、健常な人にプルトニウムを注射して、その後30年の 経過を観察するなんてことはできないですよね。 よって、数少ない過去の核実験や原発事故の被害者の非常に 不確かなデータを元に統計をとって、かろうじて安全基準と いったものを設けているに過ぎません。 また、政治的な判断によって、情報が秘匿されることもまま あるため、正確なデータがないのです。 逆に、今回の原発事故による日本国民の発ガン率の変化等の データが、今後の安全基準をより正確なものにしていく位の 話なのです。皮肉な話です。 以前の東海村の臨界事故でも、被爆者はデータ収集のために 100%助からないことがわかっていながら、安楽死もさせては もらえず、想像を絶する生き地獄を味わっています。 考えただけでもぞっとする話です。 ですが、いくつかはっきり言えることもあります。 ・人間(生物)はある一定量の被爆は常にしている。 ・放射性物質は時間の経過ととも減少していく。 ・放射線の影響度は放射線物質との距離の2乗に反比例する。 ・放射線の被爆量は少なければ少ないに越したことはない。 上記から言えることは、以下の通りです。 ・少量の放射線を浴びても人間は病気にはならない。 ・放射性物質の汚染源には出来る限り近づかない方が良い。 ・放射性物質が大量に混入しているものを出来るだけ摂取し ない方が良い。 ・放射性物質が減少するまでの期間、できるだけ被爆しない ようにすることで被害を最小限にとどめることができる。 主に、放射線被爆には内部被爆と外部被爆の2種類があります。 外部被爆とは近くに放射性物質があり、そこから直接放射線を 浴びるというものです。 外部被爆の主役は主にγ線です。 なぜなら、α線やβ線は射程が短いうえに、貫通力が低いので 露出した肌に直接付着しない限りはほとんど被爆しません。 内部被爆とは体内に放射線物質を取り込んでしまい、ほぼゼロ 距離で被爆するというものです。 つまり、γ線だけでなく、破壊力の大きいα線やβ線を超至近 距離から浴びるということになります。 こちらの方が被害甚大です。 よって、対象となる放射性物質が体内に蓄積されやすいものか、 それとも、速やかに排出されるものかということが重要です。 特に半減期の長い物質であった場合、速やかに排出されるもの であれば、体内では崩壊しない確率が高いので、破壊力抜群の 放射性物質であっても意外にセーフだったりします。 逆に、長期に体内に蓄積される物質の場合は、高確率で体内で 原子崩壊するのでハイリスクということになります。 また、健康被害の受け方にも個人差があります。 特に子供と大人では影響の受け方が大きく違い、子供の受ける 被害の方が大きいということです。 放射線は、細胞を破壊したり傷つけたりします。 細胞を傷つけるということはDNAを破壊することを意味します。 したがって、活発に細胞分裂を行って成長している子供の方が 圧倒的にダメージが大きいということになります。 小さなお子様がいらっしゃる方や、妊婦の方などは、その点も 十分にご配慮いただければと思います。 先にも説明しましたが、放射性物質には半永久的に崩壊しない ものもあれば、比較的に短期間で崩壊してしまうものも数多く 存在します。 よって、このような原発事故が発生した場合には、事故直後の 振舞い方で、被害の受け方が大きく違うものと思われます。 その点もご留意いただけますと幸いです。 以上です。 思ったよりも長文になってしまいましたが、今後、放射性物質と 向き合うにあたっての一つの参考材料になればと思っております。 また、記載されている内容に、誤りや不足などがございましたら、 ご指摘いただけますと幸いです。 また、質問等がございましたら、ご連絡ください。 私の知りうる範囲であれば、お答えすることは可能かと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。 Regd. Fumino